サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

90年代半ばのアキバでのPCゲーム事情

唐突に語ることになるけど、90年代半ばの秋葉原は恐ろしくゲーム全盛期だったと言ってもいいと思う。Windows時代直前でプレステやサターンが出て間もない頃。スーファミが後期に入り、メガドラPCエンジンは末期とはいえまだまだゲームは市場にはかなりの数のソフトが流通していた。そんな中ゲームがどんな感じで売られていたか、記憶の片隅から少し思い出しながら話してみようと思う。

この時代の秋葉原は今とは全く違う様相なので、なかなか話すにはわかりにくいんだけど、参考程度にPC自作派のVol.1(1997年)とVol.8(1998年末)に乗っていた大阪日本橋と東京秋葉原の簡単な地図を載せてみることにした。

※こちらは90年代後半の秋葉原のパソコン関係ショップ一覧。正直現存している店舗はほぼ無いと言っていい。

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この時代の秋葉原パソコンゲームは中古最盛期

さて、秋葉原のゲーム事情だがこの時代の秋葉原でのパソコンゲームの中心はやはりソフマップであろう。Windows時代直前からの流れで8bit系のゲームはかなり減っていたが、16bit系のゲームは末期だったこともあって在庫が潤沢にあった。ソフマップはこの16bit系パソコンの中古ゲームソフトはかなり扱っており、ソフマップに行ってまずはチェックすることからスタートすることになる。

正直場所はあまり覚えていないが、この地図で言えばちょうど中央通りから三菱銀行を少し進んだ先にあったあった細長いビルにあった中古ゲーム専門店が基本となっていた。ここはフロアごとに中古ゲームソフトが分けられており、1階が確か新品でここにお手頃のものから最新作まで置かれていた。2階が確かスーファミファミコン、3階にPCエンジンメガドラ等その他家庭用ゲームソフト。当時はレーザーアクティブの中古も置いてあったかな。4階と5階が確かパソコンゲームソフトと言う感じだったと思う。このパソコンゲームソフトがフロア全体で一つになっていて、そこには末期ながらPC9801系からX68000FM-TOWNS用のゲームから、MSX、8801系等ところせましと並んでいたものだ。とにかくソフトはまずこのソフマップの中古専門から探すというのが基本スタートであり、またゲームソフトも数がかなり多く正直発売されていたものはよほどレアなものを除いてほぼほぼ入手でき、同時にかなり安価で購入できたのも確かである。ブライ上巻を買ったことがあるが確か500円で売られていて、こんな感じで名作ゲームが3桁台というのもザラだったので、多分9801でゲームをするにはこの90年代半ばは一番安価で出来た時代だったと思う。またエロゲーに関しては少しピークが遅くちょうどこの95年前後あたりが全盛期だったと思う。98のゲームは90年代中期にはエロゲーまみれになっていて、無茶苦茶な数が出ていて中古ゲームショップはそりゃあエロゲーが死ぬほど売ってました。エロゲーは隙間産業?的な感じでメーカーも小規模なメーカーが多かったので絶対数の多い98で末期まで作っていたことろが多かったようで、その影響も強かったのでしょう。また比較的ロースペック(386程度)でも動いていたのでそれもあったと思います。なのでエロゲーと通常のゲームが中古含めて一番潤沢に揃っていたのがこの90年代半ばだったと思っていいでしょう。

では肝心の本体はどこで購入するのか?

そして気になる中古パソコン本体だが、これは地図で言う9番のソフマップ5号店が基本であった。こことすぐ近くにあった7号店がまず本体入手へのスタートであった。またこのソフマップ5号店の正面にあった9821の格安ショップや中古専門ゲームショップマックスロードも基本となる。今で言う千石電商秋月電子の通りという方がわかりやすいかもしれない。

まず当時のPCゲームはやはり9801が基本であった。ちょうどWindows95が出る前後もあって9801シリーズはそろそろ斜陽な感じではあったが、それでもゲームをやるにはあまりにも十分すぎるほどのラインナップ。なにせ80年代半ばすぎから90年代半ばまでの10年にも渡ってゲームを出し続けていたためか、とにかく数はハンパじゃない。ゲームならやっぱりまだ98シリーズというのは当然であった。そんな中まず98シリーズを購入するためにはまだ売られていた新品か割り切って中古というのが基本である。

ちょうど95年前後はWindows95が出ることもあったが、98シリーズはかなり数多く発売されていた。ゲームなら基準となる9821A-Mate、まだCanbeになる前の9821Multi、9801で割り切るなら新品でなく中古のほうがコスパは良いと言う感じ。9821系であれば中古のMultiがそこそこの値段で、新品なら2代目A-Mateがだいぶ落ち込んできていた。そんな感じで中古のほうがコスパが良いため、それを買うためにソフマップ5号店と言う選択であったのだ。

たしか、9801のDSがちょうどコスパ的にもよく1万強から買えたこともあり、このあたりの機種を買っておけばゲームはほぼほぼ問題なかった。9821系で行くなら9821CeやCe2クラスで少し高かったがこのあたりだっただろう。自分は当時安くなった9821Ap2を買ったがちょうど486系が値下がりし始めたこともあり、その影響でベストセラーともいわれた9801DA・DS・DXが下がってくれたこともあって、本当にこの時期は98系が一番中古も新品も安価で買える最後の時代だったと思う。

また、同様にその他パソコンも安価に売られていた。例えばFM-TOWN等は初期モデルに近いものは1万円以下であったし、MSX2にX1やFM-77、8801も値段的には1万前後で売られていた。X68000は少し相場が高かったがだいたい2万円強からである。とにかくこのソフマップ5号店は中古パソコンハード店舗としては圧倒的で、連日お客でごった返していたのを覚えている。とにかく中古パソコン買うならまずはここからスタートというのはあながち間違いではないだろう。なにせ新品もあったが新品はやはり末期とはいえまだまだ高かったので中古のコスパを考えると当然であろう。

ソフマップ5号店で中古のパソコンを購入→ソフマップ中古専門店からソフトを購入

ソフマップ以外はどうだったか?

これ以外にも千石電商のとなりあたりにあったマックスロードも中古パソコンソフトをかなり扱っていたためこちらでも購入出来たし、この一つ挟んだ通りにある郵便局のATMの前にあるツクモではX68000用の周辺機器が90年代半ばにはまだ売られていたこともあり、そちらでX68000用の部品はまだ新品で入手できた。このツクモではX68000のREDZONEが現役で売られていたりして、90年代末まではX68000系に力を入れていた。また同様にメッセサンオーではこの時代でもX68000の新品ソフト(主に電波新聞社製のもの)を販売していたため、こちらも重宝した。という感じで90年代半ば過ぎまではまだこういう感じだったので楽に入手できたのである。

末期から終焉へ…ソフマップの方向転換が転機

この状況に変化が生じてきたのは2000年ぐらい。Windows時代になってパソコンが一気に進化していき、普及台数も極端に上がっていったが同時に古い独自パソコンの在庫が少しずつであるが減っていくのである。またパソコンゲームを出しているメーカーが少しずつであるがWindows用にシフトをしだしていく。Windowsも98になってからはようやくメーカーが制作に慣れてきたこともあり、徐々に新作ゲームが発表されるようになる。一気にシフトするのはイースイースIIエターナルの発売からじゃないかな。このあたりからかなりWindowsゲームの発売が増えてきた感じがする。

そんな中このソフマップ5号店も少しずつであるが、Windowsパソコンの中古が増えていき、98系やX68000FM-TOWNSは少しずつであるが数が減少していく。今の状況を見るとありえないが、なにせ当時のWindowsパソコンは4ヶ月前後で新モデルが出るという異常なサイクルでモデルチェンジをしていて、とにかく流通量がハンパでなかった。当時はこのサイクルでもとにかく売れていて出せば出すほど売れる時代だったのだ。パソコンバブルと言ってもいいだろう。その分Windowsパソコンの中古流通量はかなり多くなってきた。

同時に90年代末期ぐらいには8bit系のパソコンはほとんど流通から消えていっており相当数がなくなっていた。また98系は98NXが発売されてから急激に流通量が減っていく。これは当然でNECの98の生産数が減ったからであるからで、いよいよ98の時代が終了したんだなと周りでは言われていた。正直この90年代中ばから末の時代は98を持っていた友人も少しずつAT互換機にシフト知っており、98は売却したり売却後に時間がたったあとに古いそこそこのスペックの9821を購入し直したりしたりとサブマシンになっていくのであるがそれもゲームが主な原因であろう。やはり98のゲームは忘れがたい記憶があるため捨て去ることが出来ないからだ。またFM-TOWNS富士通がFMVに戦略変更後はまだ中古品も数多くあったが、さすがに流通量は極端に減っていったため数はみるみるうちに減っていった。X68000はコアユーザーが多かったためか流通量が減ると同時に値段が少しずつ向上する傾向にあったが、こちらも90年代末にはほぼなくなっていた。

この90年代末期は非常にカオスな様相で突然9821As2のデッドストック機が新品で土日の出店で売られたりしてどうなってんの?って言うことが多数あった。当時29800円ぐらいだったと思うけど即買いしたw。多分今の秋葉原では絶対にないようなことが現実として起こっていたのである。X68000のREDZONEも最後は新品が捨て値で売られていた。他にも初期モデルの98NXのキーボード(新品)が1980円で売られていたりとかとにかく妙な時代でもあった。ちなみのこのキーボードは二本買った。すでに20年近く経ってるのにまったく経たりもなく、素晴らしい逸品。家用と会社用で未だに現役で使ってたりする。

こんな感じで少しずつであるが90年代末に向けて中古国産独自パソコンは数を減らしていく。同時に中古ゲームソフトも数が少しずつ減っていき、最終的には2000年ぐらいで一気に数を減らすことになる。やはりいちばん大きかったのはソフマップ5号店が中古Windowsパソコンに舵切りし、同時にパソコンゲームを中古専門で扱っていたソフマップWindows中古ゲーム中心に舵切りをしてしまったことだろう。またマックスロードの閉店も大きくこのあたりが潮時と言っていいだろう。

この時期は急激に中古16bitパソコンがなくなっていき、市場在庫から消え失せていくのだが、これに関してはあの悪名高きPSE法が関連していたとも思われる。このPSE法は当時の中古家電系ショップに大打撃を与え、パソコンだけではなく家電全般がこのPSE法のおかげで一時的に流通在庫が一気に消えていった。結局その後PSE法は改善されたもののそのあいだの数年で16bitパソコン本体はかなり犠牲にされ市場から完全に消え失せてしまったとも思える。このPSE法を管轄していた役人はなんでもその後大目玉をくらいかなり降格人事をくらったらしいが、さすがにこれに関してはお門違いなのでこの辺にしておく。ただPSE法でおかしくなったのは間違いなく、秋葉原だけではなく地方の中古家電ショップ(ハードオフ等や個人経営)にも影響は及んでおり、この前後でかなりの数を失われることになる。

ちょうどこの頃は自分は東京から離れていたので完全な末期は見てはいないが、2003年ごろに行ったときにはすでに終わっていたのは覚えている。あ~これはまずいなってマジで感じた。東京を離れて2年程度だったのに、明らかに秋葉原のパソコン事情がおかしくなっていて、16bitパソコンはほぼ皆無。98系も完全に消え失せていてX68000FM-TOWNSは影も姿もない。もちろん中古ゲームソフトはどこにも存在していない。これまずいぞって本気で感じた。すでにX68000も9821も手放していたので、どこかで動かないとエライことになるって感じてその後3年ぐらいしてヤフオクで9821Ce2とX68000CompactXVI(電源レストア品)を急遽購入したんだけど今も保管してる。

今にして思えば90年代半ば前後から90年代末までは国産16bitゲームソフト最後の輝きだったと思う。あの時代のパソコンゲームが好きで秋葉原に行ける環境だった人は本当にラッキーだったと思う。最後の輝きを実際体験出来たわけだし。すでに今から手を出そうとしてももはや実流通ではほぼ不可能。ヤフオクあたりで探すしか無いが、なにせ年代物なだけにまともに動くかどうかも怪しいため、かなりハードルは高くなってしまった。ハードルが低く買えた最後の時代がこの90年代末期だったと言ってもいいだろう。

ちなみに大阪日本橋も当時たまに顔を出していたが、こちらもほぼ同様と言っていいだろう。ただ、秋葉原と比べると少し早めに進行していたとは思う。下に97年前後の地図を差し込んでみた。今と比べるとその差に愕然とするだろう。

※こちらは大阪日本橋90年代後半のパソコンショップ。今や面影はほぼない…

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90年代半ばのパソコンゲームはこんな感じであった。ろうそくは消える間際に最後に輝くと言われるがまさにそれだったのだろう。実体験してきた身からすれば当時はそんなこと感じるわけもないが、今考えてみればよくわかる。あれは素晴らしい時代だったのだと。

今やフルHDや4Kモニターと選択肢も増え、9821に関して言えば31Khzモード(GRPH+フルキー2押しながら起動)にすればAT互換機のVGAモードで出力されるため普通に画面は映る。また中華製の安価な液晶モニターX68000の特殊解像度に対応しているものも出たりして、16bitパソコンを繋ぐための最大のネックであるモニター環境も非常に整ってきた。まさに皮肉ではあるが喜ばしいことではある。ちなみに通常のモニターに映す手段をして、X68000や8bit系パソコンは電波新聞社から発売されているXPC-4を使うしかないのが非常に難しいところではある…。

センチュリー 8インチHDMIマルチモニター 「8inch plus one HDMI ブラック」 LCD-8000VH2B

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