サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

1995年の頃のリムーバブルメディア事情

古いパソコン批評を読んでいたら、昔のリムーバブルメディアの特集の記事があったので、当時の時代背景的なものを振り返りながら、各メディアを説明しようと思う。

以前も似たような記事を書いたんだけど、今回は雑誌の記事もいれているのでだいぶわかりやすいかなと。

当時のリムーバブルメディア(パソコン批評 1995年秋月Vol.01より抜粋)

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なにせ当時はまだWindows95も無い時代。NECの98シリーズが実に8割以上を占めていた時代。リムーバブルメディアが色々と増えてきていた過渡期でもあった。見ての通りMOが市民権を得ていて結構な数のMOが普及していたのも事実。ちょうど値段も3~4万円程度まで落ちてきていて手が出しやすかったというのもある。次点でPDという見慣れないメディアがあるが、これはパナソニックから出ていた当時のパソコンについてきたこともあり、パナソニック製のパソコンを買っていた人なら覚えがあるかもしれない。

ちなみにまだCD-Rドライブは民生用では発売しておらず、CD-R夜明けすら来ていない時代でもあることを念頭に入れてもらいたい。

最初はMOとPD

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最初はMOとPDから。チェック用パソコンが実にPC-9821という時代を感じるが、当時はまだまだPC-98シリーズでMS-DOSとして運用するというのが当たり前であり、これも当時の流れとしては当たり前であった。なお容量がPDの約700MBを除くと200MB前後からそれ以下しかないが、これも当時を考えれば十分であった。なにせMS-DOS6.2ですらFD6枚組。ゲームは枚数が多くてもせいぜいFD20枚ぐらい。大半は4~6枚程度の枚数で今みたいにGBやTBクラスの容量は必要なく、200MBもあれば十分であった。

当時はMOはマストみたいな感じで持っていて当たり前という雰囲気もあった。なにせ官庁関係のデータ管理にMOが採用されていたということもあり、民生用もそれに応じてMOが幅を効かせていたというわけだ。また、メディアの値段も1枚300円程度と非常に安かった。先にも話したがMS-DOSでの運用と同時にPC-98シリーズはCドライブ固定の起動でなく、起動順番に応じて起動ドライブを変えられるというメリットが有り、多数のMOにMS-DOSを複数インストールして、それぞれで管理出来たのだ。なのでデータ用に使う人もいれば、起動用として使っている人もかなり多かった。MOはよくアクセススピードが遅いと言われていたが、当時のMS-DOSの容量の少なさを考えても特に気になることもなく、同時にゲームをプレイする際もあまりどころかほとんど気にもならない速度であった。FDベースのゲームでもあったため、とにかく読み込むファイルも小さかったこともあったのだろう。余談であるが、X68000の初期モデルの内蔵HDDはSASI接続な上に容量も非常に少なく(20MB・40MB)ゲームのインストールもかなり厳しかったのだが、この頃のMOドライブはすでにX68000の内蔵HDDよりも高速になっていて、MOをつなげてインストールしたほうが内蔵HDDよりも速くなっているという逆転現象も起こっていた。

さて記事にはMOは230MBと128MBと二種類あると書いているが、実際のところ230MBのモデルがこの後かなり値下がりもしたため、実質230MBモデルを買う人がほぼ大半で正直128MBモデルをわざわざ買っていた人を俺は知らない(とは言えMOはこの95年でかなり値下がりしたためそれ以前に買った人は廉価版の128MBを買っていたかもしれないが)。

PDも売っていたがいかんせん値段が高かったことや周りで誰も持っていなかったこともあって正直選択肢には入ってこなかった。このPDドライブはCD-ROMドライブと兼用でもあり主流になる可能性はあったが、この後のCD-Rドライブの大暴落により結局容量単価で全く勝てなくなってしまったPDはCD-Rドライブが出た時点でお役御免になる。そもそも当時はWindows95もなく、PC-98系がメインであったためわざわざ選ぶユーザーも少なかっただろう。

ZIP・MD-DATA・リムーバブルHDDとなかなかの曲者揃い

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ここからは見慣れない言葉が出てくる。まずはZIP。

ZIPと言っても圧縮形式のZIPではなく商品名である。このZIPは当時知り合いが持っていたので実際見たことも触ったこともあるが、とにかく安かった。なにせ本体が1.5万程度で容量も100MBとなかなかの多さ。光磁気でなく磁気ディスクを採用していたこともあり、アクセススピードも速かった。本体はとにかくプラスチッキーで安いなぁという感じはあったが、それも実売価格を見れば納得。安価なHDD代わりとしては非常にポストFDとも言われていた。ただこのZIPはSCSIモデルとパラレルポートモデルがあり、このパラレルポートモデルとにかくアクセススピードが死ぬほど遅かった。そりゃあもう気になるレベルのやばさ。ただSCSIモデルだとかなり速く当時はMOよりも快適に動いていた。正直MOかZIPか選んだ人は多かったと思う。

だが最終的にはZIPは普及しなかった。これはメディア単価の問題もあっただろう。なにせMOは95年以降急速な普及速度で本体の値段はもちろんであるが、メディアの値段がどんどん落ちていった。ZIPも本体は安かったがメディアの値段はMOはその半分まで落ち込んでいた。またMO本体も値段が下がっていき、最終的には2万円前後まで落ちたことで普及率の高さ及びメディアの安さが決め手になったのだろう。

次はMD-DATA。こいつはすごかったなぁ。当時秋葉原ソフマップで唯一みたが、いかんせん値段が高い。あげくアクセススピードがかなり遅い。メディアも高い上に当時値段が下がっていっていた音楽用のMDメディアは使えないときたもんだ。出た当時から「こんなの誰が買うんだよ?」って思っていたんだけど案の定知り合いは誰も買わなかったし、買ってる人間を見たこともない。

そもそもMDって当時から結構壊れてたのよ。あの小さな機械のなかに細かい部品を相当ぶち込んでコンパクトに仕上げてるせいか使い込むと壊れてた。また、このMD-DATAは一応音楽プレイヤーとしても使えていたのだが、何を血迷ったのか再生専用という始末。これでは誰も買わないよな~って感じでとにかく何故出したのかがさっぱりわからない代物だった。

余談だがMDプレイヤーは実は日本でしか流行っていなかったという商品で、海外では全く販売もされていなかった。当時海外旅行に行った際にアメリカの空港で「コレはなんだ?」って感じで質問をされた覚えがある。え?MD知らねーの?って感じでびっくりしたが「これは音楽プレイヤーだ」と説明して音楽を流したらびっくりしてた。海外からすれば当時のMDプレイヤーは魔法の箱のように見えたんだろうなぁって思う。

最後はリムーバブルHDD。一言で言えば外付けのカートリッジ方式のHDDドライブ。本体にHDDメディアを差し込むことでHDDになるというもの。当時はJaz・ORBと言ったものが存在した。多分知ってる人は相当少ないと思う。これも知り合いが当時持っていて、触ったことがあるんだけどなにせHDDなのでそりゃあアクセスは速い。Windows95が正式発売されたあとも結構使っていた人は多いと思う。容量もかなり拡張され最終的には2GBクラスまで出ていた。ただこれも最終的には廃れてしまう。というのも内蔵HDDのスペックアップがものすごい勢いで進み、容量はまさに倍々ゲーム。リムーバブルHDDのメリットであった安価で大容量というものが完全になくなってしまった。一年たてば容量が倍に膨れ上がるHDDの進化のスピードにコストが耐えきれなくなったというのが真相であろう。

最後にDVDに関しての記事があるが、まだこの時点では仕様も完全に定まっていない状態。そもそもCD-Rドライブすらまだ出ていない時代の話である。ただ、記事の内容は案外と的を得ていると思う。最終的にビデオは駆逐されすべてDVDに変わったこともそうだし、当時から大本命メディアとして見られていたのだ。

最終的には当時はMOで問題なかった

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いろいろと記事では検証しているが、なにせ当時はまだMS-DOS時代ということもあって、どのメディアもさほど差はなかったと言えるだろう。一応Windows95のβ版でも動作チェックはしているがこの辺りは速度というよりもドライバーその他の認識度のチェック。特に新しいドライブほど認識がなんとも言えないというのは当時の流れでもある。そういう意味でもMOを買ってその後もWindowsで使うという流れはすでに出来上がっていたと言ってもいいだろう。

結局MOはその後640MBモデルの発売もありCD-Rドライブが普及しても手軽な容量(230MB)ということもあり、同時にまだ需要のあったPC-98市場もあったことで最終的には最後まで生き残る。さらに1.3GBモデルまで進化したが最終的にはCD-Rドライブの本格普及でかなりシェアは落ちる。その頃になるとCD-Rメディアの単価は25円/1枚まで落ち込み、MOでデータをやりとりするよりもCD-Rに焼いた方が値段的にもお手軽になったからだ。またMOはドライブを持っている上にSCSIカードもいると言った条件もあったが、CD-ROMドライブであればWindows95以降に買ったパソコンであればほぼ確実についてきたこともあり、非常にお手軽なメディアになったからだろう。そしてDVD-Rドライブの登場でその役割は終えたと言ってもいいだろう。

最後に話はぜんぜん変わるが、古いパソコン批評は今読んでみても結構おもしろい。こういった特集記事も当時の時代背景的なものがあり、リアルタイムで体験していたからこそ今見るとまた新たな発見がある。今後もきになる記事があれば色々と紹介してみようと思う。