サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

Windows95時代の自作PC事情:PC自作派 Vol.2より

 随分間が空いてしまったが、今回はPC自作派Vol.2より当時の自作PC界隈を振り返ってみようと思う。なお雑誌の発売時期は1997年4月号になる。

setoalpha.hatenablog.com

巻頭特集:ビデオアクセラレータのトレンドと選択

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今回の特集はこちら。ビデオアクセラレータと言ってもピンとこないかもしれないが、これは今で言うグラボのこと。当時はグラフィックボード(グラボ)と呼ばないでビデオアクセラレータと言っていた。他にもこの時期からゲームパソコンを組んでいたりしてゲームはやはり当時からポイントとされていたこともわかる。また98コンパチブルパソコンからは当時の時代背景を感じ取れる。

MMX Pentiumの普及時期

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ちょうどMMX Pentiumが登場したのもこの時期だった模様。正直MMX Pentiumコスパ的には出た当初は今ひとつだったこともあり、むしろMMX Pentiumが出たことによる無印Pentiumの166Mhzや200Mhzが価格ダウンしたことでコスパがかなり上がり、あえてこちらを選ぶ人も多かった模様。自分も当時値段が下がったPentium 166Mhzを購入していた。なお、この値段ではなくさらに価格が下がった段階で購入していたのでもうちょっと安かったはずである。

巻頭特集:グラボ特集

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Windows95が出てまだ間もないこともあり、ようやくDirextXが産声をあげる時代。まだまだ2Dが重要視される時代で3Dなんてついていたところでかわいい程度。PSクラスの3D描写もできないようなものであった。今からすれば本当に考えられないのだが、当時のDirectXはまだまだ全然話にならなくて、こんなのでパソコンでゲームとかできるのかよって言われていた時代。まだDirextX3の時代である。このDirextXもWindows98と同梱されたDirectX5から一気に進化するのだが、正直まだ話しにならないこの時期は正直疑問符が打たれていたと言っても良い。そもそもDirectXよりも3dFX社の出していたWindows対応APIでもあるGlideが幅をきかせており、Windowsで3D系のゲームやるならVoodoo刺してClideでやるべきだよね~って言われていたのである。なのでDirextXって言われても当時のPCユーザーからは「フ~ン」って感じであしらわれていたのもまた事実。そもそも「DirextXって2D専用だよね?」って言われていたのだ。いや~まさに当時の時代ですよ。それが今やDirectXベースで3Dゲームがガンガン出てる。当時そんなこと言っても絶対信じなかっただろう。それぐらいDirextXは貧弱だったし、Glideは強烈だったのだ。

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こちら当時の主流グラボ。見ての通りまだnVidiaの大ヒットチップRIVA128すら存在していない。せいぜいViRGE程度。あとは先にも話した3dFXのVoodooがあるぐらい。ちなみにこのVoodoo、2D機能はないので別途2Dに対応したグラボが必要となる。当時はこういった3Dだけの機能に絞ったグラボも存在していた。それでいて売れないことはなくVoodooはかなり売れていたという話。それだけ当時からもパソコンでの3Dゲーム需要はあったということでもある。ちなみに同様にPower VRというチップもあるが、こちらも同様に3D機能のみに絞ったもの。ただ、対応ゲームが本当に少なく全くといってもいいほど売れなかった。チップの機能はかなり高かったという話でかなりのポテンシャルはあったもののソフトウェアがなければ全く話にもならなく、また当時のこういったVoodooやPowerVRといったチップは専用のゲームソフトがないと効果が全く出ないこともあり、PowerVRは惨敗と言ってもいいだろう。

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見ての通り3D機能に関してはこの程度。まだまだワンチップで2Dも3Dも両方とも性能を出すには早すぎる時代であった。見ての通り、VoodooとPowerVRが抜きん出ているのがよく分かるだろう。そもそもWindows95時代に3Dゲームをプレイするというのはなかなかにチャレンジャーなことでもあり、当時はまだ無茶すぎた。この無茶を現実にようやく持ち込んできたのがRiva128であったが、この頃はまだまだ話にならなく、PSのようなゲームをプレイするのはほぼほぼ不可能と言っても良かっただろう。その中でもベストチョイスされているMystiqueは当時としては2D・3Dのバランスがよくそこそこのゲームをプレイするならこれしか選択肢がなかったと言っても良い。パワーユーザーはむしろ当時の2D最強3D最低のMilleniumとVoodooの選択肢を選んでいたが、なにせMilleniumは値段が高すぎで正直な話すでに2Dはこの時代ですでに限界値に近い状態。どのグラボを選んでもベンチ的には差がでても体感的にはほとんど変わらないといった状況であった。それだったらMystiqueを選ぶという人も多く、中にはMystiqueとVoodooという選択をとった自作派も多かっただろう。

まだまだ3Dというよりも3Dゲーム自体がやっと夜明けを迎えた時代。そういった意味でもグラボ自体がちょうど時代の切り替わる過渡期であったとも言える。そんな過渡期だったからこそ選択肢が難しかったとも言えるだろう。この後Riva128により一足飛びでPCグラボ界隈は進化するわけなのだが、それまではこんな感じで煮え切らない状態にあった。

特集2:最強のミュージックパソコンをつくる

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ミュージックパソコンと言っても当時はMIDI音源が主流の時代。なので当然MIDI音源をベースに制作することになる。なのでパソコン本体の価格というよりはMIDI音源やアンプ等にかかる金額が結構かかるため、なかなかの予算配分となってしまう。

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当時はソフトウェアMIDI音源なるものもあったが、正直コレに関してはやはり音が貧弱で選択肢的にはなかったと言っても良い。なにせ対応が最低限でMMX Pentiumが必要な時点でCPUの値段を考えても外部音源を買ったほうがコスパも良かった。そして見ての通りだが、パソコン本体というよりも音源部分だけで13万円もコストが掛かっている。さすがにこの予算計算はかなり気合が入っているので実際はここまでかかるというのはない。アンプやスピーカは当時のコンポやCDラジカセを利用できるし、また鍵盤に関しては必ずしも必要ではないため、後々の購入ということもできる。ここでの予算はかなり本格的に揃えた場合になるので参考程度と言っても良い。

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裏配線はこんな感じ。当時MIDI音源を組む場合は少なからずこんな感じで組んでいたと思う。ここでの例はアンプも内蔵しているためアンプにも出力等をつないでいるが、簡易的に組むのであればパソコンとMIDI音源を接続し、MIDI音源からCDラジカセやコンポ等に音声端子で接続すれば問題なく音は出るようになる。当時のCDラジカセやコンポは結構音質もよかったため、こういった感じで組んでいた人も多かったと思う。

今ではパソコンで音楽を聴くというのは当たり前でもあり、普通に皆聴いている。当時はなにせまだMP3やAACもなかった時代でパソコンで音楽を聴いて楽しむということ自体が珍しいことでもあった。そんな中こういった特集を組むのもまた時代の一つの流れであったのだろう。何もかもが初めてで珍しかった時代だからこそできた特集だったのかもしれない。

BIOS特集

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自作PC雑誌が少ない時代だったからこそむしろ必要であった特集。このAword BIOSは当時の標準と言っても良いBIOSでこの画面自体お世話になった人はかなり多いと思う。このBIOS画面からいろいろなことを覚えていった人も多いだろう。

特集3:最強ゲームマシンの制作

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今も昔も人気コンテンツでもあるゲームパソコン。もちろんコンテンツ的には人気であるが、当時のゲームパソコンを組むとなると今と違って恐ろしく金額がかかる時代でもあった。もちろん今も最高のということになれば金額はかかるが、ただ最高にこだわらなければそこまで金額はいかない。ただこの当時は最高にこだわらないとまともに本当に動いてくれないゲームが多く、そういう意味でも困った時代でもあったのだ。

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見ての通り凄まじい金額…。まあ当時のパソコンは10万円以下で組むには相当厳しい時代だったのでそれを考えるとそこまではという感じではある。それでも厳しい価格だけど。また当時の最高スペックとも言うべき構成なのでMMX Pentium 200MhzやMilleniumとVoodooの組み合わせという感じで金に糸目をつけないうえにハンドルコントローラまで購入しているので、そう考えるとまあまだまだ値段を下げる余地はあるわけで、あくまで最高にこだわった場合これだけかかるという試金石みたいなものであろう。

ただ今も最強にこだわって作るとなるとi9 10900KにGTX2080Tiを選んでくるのでそう考えると案外総額という意味で考えればあまり変わらないのかもしれないが…。

チップセット

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PentiumII前夜のお話。430TXという結構懐かしい響きも出てくる。正直UltraATA対応以外はあまり意味がなかったが、そのUltraATAも体感的にはさほど差もなくまだ発売もされてない規格であったので現実味はなかった。結局はPentiumIIへの後継チップセットでもある440LX時代から普及が始まる感じになる。

当時のショップブランドパソコン

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値段を見ても当時の状況が見えてくるがなによりも店舗数。ドスパラ以外の店がもうないという…。。。

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こちらはショップ紹介。TwoTopは一度倒産して再復帰。ソフマップは今も健在だけど店名が変わっているかな…。どちらにしても当時の地図の店がほとんど無いことに色々と哀愁を感じる…。まあ、20年も前の話だからね…。

98コンパチブルパソコン

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ちょうどこの97年前後はPC-98ユーザーがAT互換機へと移行して行く時期でもあったと言ってもいいだろう。98シリーズの足回りの貧弱さがWindows時代になって露骨に現れ始めており、加速度的に買い替えていったユーザーが多かった。もちろんサブとして残しつつというユーザーもいたが、98は幸運にもそこそこ中古で売れるパソコンであったため買い替えが発生しやすかったということもある。なので当時はこういった98対応Windowsパソコンという特集もよくあった。が、結果として言えばこれは駄目だった。なにせエミュレータみたいなものを突っ込むのであるが安定性その他が今ひとつであり、これをいれるぐらいなら安い中古の音源付き9821シリーズを買ったほうが結果的に安くついたのだ。当時の98シリーズは21MultiシリーズやDA・DS・DXシリーズであれば1万円前後から買えたため、正直ここまでして98にこだわるのであればいっそのこと二台目として中古で買ったほうが早かったし安定性も高かった。そういう意味ではこの98コンパチブルパソコン自体がロマンであったと言ってもいいだろう。

また、FM音源がサポートされていないことが致命的で98の最大?のメリットでもあったゲームがほぼ全滅するということ。この時点で正直…な感じではあった。

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見てのとおりであるが、98を動かすためのツール及びハードで3万円以上の投資がかかっていることになる。結果的にこの時点で当時はまだ潤沢であった中古の98を買ったほうがましであったのだ。3万もあれば01系は音源付きのDA・DS・DXシリーズ、21系であれば初期の86音源搭載機でもあったMulti Ce・Cs・Cs2や中期までのA-Mateまでであれば十分買えただろう。またまだ当時は定価かそれ以下でも購入できた86音源や86五感音源でもあったWaveMaster等も1万円以下で購入できたのでそれ+さらに安価であった486系のX-Mateという選択肢もあった。もちろんSCSIカードやMOドライブといった追加投資はかかるが、そもそもそういったパワーユーザーはすでにMOドライブは持っていた人も多く、SCSIカードもC-BUSであればかなり安く中古で買えた。そういう意味でもこの98コンパチブルパソコンは本当にロマンとしか言いようがなかった。

総評:今回紹介したパソコンデータ

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PC自作派 Vol.2からは以上。次回はVol.3から紹介するとします。