サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

ゲーム機列伝⑦ プレイステーション型式商法

 PSの本体は当時は非常に珍しい販売方法だった。俗に言う型式商法と言われているけど、これは今の4世代目になっても続いてるし、同時にソニー以外ではほとんど採用されていない(MSは箱○あたりからやりだしたが)。この多数のバリエーション家電屋の発想での販売戦略といえ、不満を言うユーザーも多いがこれは非常に理にかなった商法だと自分は思う。

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SCPH-1000(94/12/03:39,800円)

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初代本体。スーファミの定価が24,800円ということを考えても非常に値段は高かったが、それでも売れた。この初代機のみS端子が本体に直挿し可能となる。これ以降のモデルはS端子はAVマルチ経由でないと繋がらなくなる。本体としては非常に不安定で、長時間起動で熱暴走を起こしゲームが止まってしまうという事例もある(自分も当時実際体験した)。また、経年劣化でレンズの読み取りが安定せず横置きする、逆さまに置くなどという緊急対策もあったりした(これも体験した)。なお、半年後に新型式が出るのだが、それ以降も新型式の定価に合わせて値下げをし、引き続き販売される。また、初代機ならではの不具合も多数あり一部型式によるバグが発生したりもする。

SCPH-3000(95/07/21:29,800円)

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半年後に発売された新型番。新型番とは言え改善しているのはS端子の排除と熱暴走対策、画像処理プロセッサの改善である。ただ、初期に販売されたモデルの中には初代機の基盤をそのままS端子のみ除外して販売していたモデルもあるとのことなので、これは分解してみないとわかりにくい。チップセット構成も初代機とほぼ変わらない。単純に一部チップのマイナーチェンジモデルとも言える。実はさりげなくプロテクトチェックのBIOSに変更がかけられており、安易なバックアップの起動がちょっとだけ難しくなっている(俗に言う黄金軸がちょいと使いにくくなっている。使えなくはないがタイミングがシビアになったという感じ)

SCPH-3500(96/03/28:24,800円)

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これもマイナーチェンジモデル。どちらかと言えばコントローラが2個ついているというモデルになる。中身はほぼほぼ前モデルと同じであるが、当時発売された鉄拳2に合わせて本体を買えばコントローラも2個ついて値段も少しお得になったという感じ。当時は2D格闘ゲームも出だしており、この頃にまわりの格闘ゲームユーザーがPSを購入しだしていた。チップセットのマイナーチェンジもあり、微妙にチップサイズが変更されている。

SCPH-5000(96/06/22:19,800円)

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右下のRAMが1枚になり、その他チップのマイナーチェンジモデル。最後のビデオ端子モデルで、このモデルを最後にAVマルチのみのモデルに切り替わる。ちょうどNintendo64の発売直前で、その対策でN64よりも安い価格で新モデルという形を取ったという方が正しいと思う。また、過去モデルまでで若干出ていたバグを潰したモデルでもある。なお、FFVII発売ちょうど半年前になり、FFVII購入の際の混乱期を避けるためにこのモデルからPSを購入したというユーザーも多い。たかがFFと思うかもしれないが、これは本当のことで実際FFVII発売前後は本当にPS本体が品薄になっていたので、この判断は正しかったということになる。

余談であるが、このモデルからCDのトップローディング部分のスイッチ仕様が変わっており、俗に言う黄金軸による無理やりバックアップ起動がほぼ不可能になる。

SCPH-5500(96/11/15:19,800円)

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完全に基盤を再設計したほぼ新規に近いモデル。ビデオ端子はオミットされ、コンデンサ等もかなり削減されておりコストがかなり落ちていることがわかる。GPUが新チップになり、初代機のほぼ完成版と言ってもいい。このモデルから発熱等も減少し非常に安定した挙動になる。画像処理能力も向上したりと、ビデオ端子がなくなったことにより基盤がすっきりとしてきている。なお、FFVII直前モデルということ及び年末商戦もあり、この頃のPSは売り切れが続出していたようである。また、このモデル前後から本体の利益の逆ざやがほぼなくなりプラスに転じていたようだ。

この時期までに購入した知り合いも多く、だいたい周りの大半がここまで出ていた型式のどれかを所有していた。自分は初代機を持っていたので、まったくもって買い替えていなかったが。

SCPH-7000(97/11/13:18,000円)

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初のデュアルショック搭載モデル。このモデルはほぼ全改定に近いモデルになる。前型式基盤をベースに画像演算プロセッサをバージョンアップ。デュアルショック標準搭載。CD読み込み部の改善及びCD-ROMコントローラの一部統合(7番)。その他細かい変更と今までの不具合らしきものがすべて亡くなった。なお、CDレンズ部はこのモデルを境目に二種類存在しており、当時秋葉原等で部品として購入できる店でも2種類存在していた。また、このモデルから本体を縦置きやひっくり返す必要はなくなり、熱問題もほぼ解決した。

また、バックアップを動かすためのMODチップのハンダ作業が一番難しいのもこのモデルである。6番のチップの足に直付けするため、下手するとハンダが隣の足に侵食してぶっ壊れてしまうおそれがある。これのハンダ作業には細心の作業が必要となるのである。

SCPH-7500(98/12/01:15,000円)

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若干基盤が小さくなっているが、この型式のPSは唯一誰も持っていなかった。大きくはCD-ROMコントローラがサウンド周り含めてさらに統合されたため(6番)基盤がコンパクトになったのであろう。最終的にこのモデルを最後に外部コネクタがオミットされてしまうため、本来のPS本体すべての機能を使うとすればこのモデルを選ぶのが最終的にマストとなってしまった。なお、外部コネクタは主に改造コードのために利用されており、公式では何も出なかったような気がしないでもない。

余談だが自分が買った2台目にもなる。初代機は一度レンズを買い替えたが限界も近く、結局人に譲る形で自分はこの新型式に切り替えた。MODチップ難易度は中の上という感じだが、ハンダのそこそこの経験があれば問題なくできるレベルなので、ある程度器用であればまあ問題なくできたと思う。とにかく電源周りの発熱がかなり落ちていた思い出がある。

SCPH-9000(99/05/28:オープン価格)

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チップセットは変わらず、基盤のリサイズと外部コネクタのオミットが主な変更。この基盤もみたことあるが、とにかく本体サイズに対しての基板サイズが小さくてすげえなぁって思った。ちなみにMODチップだけでなく、外部コネクタを別途購入してハンダで付けたことがあるが(ほとんど根性よ)比較的楽につけられた。PS本体は実質前型式で完成しており、この型式以降は完全なコストダウンであろう。安定性も全型式でほぼ完了していた。

また、この頃はオープン価格が流行ってきてて妙なことになってたが、実質前型番とほぼ同じ値段で売られており、むしろ少し安めの価格帯で販売されていた。

SCPH-100 PS-ONE(00/07/07:15,000円)

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当時のFFIXに合わせて発売されたが、すでにPS2が発売されており、また、01/09/12には9,800円に値下げされる。PS2時代が始まっていたため発売は本当にひっそりという感じであったが、ぼちぼち売れていたらしい。また、当時はPS2に採用されたPS互換用のワンチップで出ると噂されていたが、単純に前モデルのチップを使った再設計モデルであり、中身はほぼ小さくコンパクトになったSCPH-9000という感じだろう。外部端子もへったくれもなく、端子も最低限。電源コネクタはアダプタ形式と徹底的なコストダウンが伺われる。筐体サイズも実に半分程度になっており、実質CD部がほぼメインのサイズと思っていいだろう。なお、使っていくとCD開閉ボタンにガタが来て少しボタンが押しにくくなる。分解してみたところ、完全にパーツの干渉ということで(プラスチックパーツの摩耗)ほぼ直らないという…。

ちなみに発売日にこれを購入した自分は周りの知り合いから阿呆呼ばわりされた覚えがある。当時持っていたSCPH-7500はそのまま知り合いに売却し、PS-ONEを購入した先速攻でMODチップを搭載させた。結局改造コードセットもCD-ROM対応で出てたこともあったり、なによりこの後出ると言われていた液晶モニタがすごく気になってたから。まあ液晶モニタは結局3年ぐらいたってかったけど、そこそこ楽しませてもらった。最終的にこの本体は今も持っている。というのも末期に購入したこともあり、使用頻度が少なかったということで未だ現役で稼働するからである。とは言え、最近はほとんど動かしていないので当時購入した箱に入れて保管しているが…。

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という感じでざっとPSの型式を振り返ってみました。結局大きな変化は5500のときの基板設計変更と7000のときのチップセット完成型。あとは小さな変化や統合系が多く、ほぼコストダウンと言ってもいいと思う。PSの型式商法は色々と言われるけど、コストダウンを含めて無理のない定価販売を行うことで、結果としては値下げになりユーザーも買いやすくなるわけで、初期に買った人がこれに対して文句をいうのはお門違いだと思う。確かに直前とかでひどい目にあった場合はまた違うが、基本先に買っていた人はそれだけ先に楽しんでいたわけである。

家電を見ても、今は40インチテレビも安くなり、6万程度から購入できるが、それも5~6年ぐらい前は10万近くしてたわけで、それに対して目くじら立てる人もあまりいないわけで、それと同じことを20年以上前にゲーム機で初めてやったのがソニーだったというだけの話である。実際、逆ザヤが発生してしまうので、スーファミ以前の時代は本体もギリギリで利益が出る感じで販売していたし、それ以降チップの単価の低下が発生しても値段を変えずに販売しているため、中古価格と新品価格の格差がひどすぎて目も当てられないという感じでもあった。特にスーファミ全盛期の時代はスーファミが定価で若干値下げしても2万以上だったのに、中古だと15,000円弱だったり、PCエンジンはもっとひどく中古と新品で値段が1万以上違っていた。

また、後に買えばそれだけ楽しめる期間は短いというのもある。ゲーム機の寿命は大体6~8年程度であり、末期になればなるほどソフトの数は中古含めて多くなるが、新作ゲームの数は少なくなり、それだけリアルタイムに遊べる機会は減ってくるわけで、その機会を先に買う人は楽しめることを考えるとそこまで文句を言うのもどうなのかな?とも思う。

このソニーの型式販売はPS2以降も引き続き続けられ、PS時代は一部不満も多かったがPS2以降はユーザーにも受け入れられることになる。そういう意味でもコストダウン及び再設計によるゲーム機本体販売というのをやりだしたソニーは先見の明があったとも言えるだろう。また、この発想をした当時の久夛良木氏の先見の明は本当にすごかったのだなと改めて実感しますね。