サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

初期のPentiumII、Celeron時代におけるオーバークロック狂想曲

PentiumIIが出てまだベースクロック100Mhzがようやく対応したそんな時代。加速度的にCPU速度が上がって行ってた時代に現れた一つの奇跡?とも言えるのがお手軽オーバークロックであった。

今日はそんな初期オーバークロックのお手軽さを含めてざっくり当時を振り返ってみようと思う。

〆突如現れたCeleron 266Mhz(SL2QG)

1998年4月後半:当時の価格 26,800円。ただし、2ヶ月程度後には2万を切り出してくる。さらに8月後半になってくると15,000円を切り始めかなりのオトクな値段になっていく。

このCPUは出た当時は全く持って注目もされていなかったのだが、当時のPentiumIIはカセット式。2ndキャッシュが外部で接続されており、速度帯域がCPUの半分であったため、若干の力不足感があった。Celeronは単純にその2ndキャッシュを抜いただけの使用。これだけみると全く話にならないCPUであったのだが、こいつはコアだけは当時の400Mhz対応PentiumIIのコアに近く、帯域がベースクロック66Mhzだけというものであった。

そこで誰が思いついたのか、ベースクロックを66Mhzから100Mhzにして起動するという荒業をやりだす。これが思った以上に普通に動き始め、界隈でざわつく。

「どうやら2ndキャッシュが無いだけでベース100Mhzでふつうに動くぞ」

という話が広がっていき、ちょうどGW前に発売ということでこぞってPCマニアたちが買い始める。自分もそのうちの一人であったのだが、これがまた普通にベースクロック100Mhzでも動くわけ。もともとが「66Mhzx4倍=266Mhz」だったのが、「100Mhzx4倍=400Mhz」で動き出したわけだ。

当時の同スペックのPentiumII 400Mhzの値段は10万強。350MhzのPentiumIIでさえ8万前後したわけで、価格的に1/5の価格で少なくともベースクロック100MhzのCPUが手に入るとなった。

確かに2ndキャッシュ問題等あったわけだが、それ以上にベースクロック100Mhzに上がることによる足回りの速度向上のほうが影響が大きく、はっきり言えばこの時点で「PentiumIIの価値は地に落ちた」と言ってもいいだろう。

周りの知り合いを含めて自作ユーザーはこぞってこのCeleron266Mhzに続々と乗り換えていった。1年以上使っても全然動いているわけで、買い替える必要性がなくなったわけだ。

もちろんすべてのCeleron266Mhzが対応していたわけではなく、その中で型式「SL2QG」が一番確率が高かったと言われていた。だが、それ以外の型式はほとんど流れていなく、実質Celeron266Mhzは劣化PentiumII400Mhzとして売られていたことになる。このCeleron266Mhzはこの後のかなりの数が売られていたが、値段が激落ちした頃に自作ユーザーの大半はほぼほぼ劣化PentiumIIとして利用していたであろう。なにせリテールのクーラーであっても普通に利用できていたからである。

〆高速化されるPentiumII 266Mhz&300Mhz(SL2W7・SL2W8)

こちらはPentiumIIのパターン。こちらも型式対応にはなるが、266Mhzが「SL2W7」、300Mhzが「SL2W8」という型式になる。この型式にPentiumIIは今まで出ていたシリーズと違い、パッケージタイプは同じカセット式でありながら、中の仕様変更が起こっており、実質上位クラスのCPUをわざとデチューンして売っているという話が出回った。

そうなると話は変わってくるわけで、こちらも当然価格的なことになってくる。当時の最安価格を比較すると

PentiumII 450Mhz:約10万円

PentiumII 400Mhz:約8万円強

PentiumII 300Mhz(SL2W8):約4.5万円強

PentiumII 266Mhz(SL2W7):約3.5万円強

Celeron 266Mhz(SL2QG):約1.4万円弱

Celeronの安さが驚異的で400Mhz前提で動かすと考えるとコスパは最大級。これがいちばん人気なのは変わらないが、そんな中PentiumII 300Mhzの方に注目が集まる。

これは当時最大周波数でもある450Mhzに対応するCPUになるわけで実に半額以下。どちらかと言えばこの「SL2W8」に人気が集まる。なにせ同じPentiumIIの同周波数にもかかわらず、一万円強値段が違うわけだ。

ただこちらに関しては前回のCeleronほどではなかった。それはそうだ。いくらコスパがよく当時最高のPentiumII 450Mhzと同等と言われたところでコスパ的にはそこまで良くはない。結局は最強コスパであるCeleron 266Mhzには勝てなかったわけである。ただそれでも地味に一部の最高速を求めるユーザーの間には浸透していたようだ。

ただ、Celeronとは違い少しオーバークロックするには厳しく、リテールクーラーでは物足りない場合もあったため安定して動かすには少し工夫がいった。それでも当時は皆このCPUで楽しんでいたものである。

〆最後の刺客Celeron300A(SL2WM)

こちらも同じようにCeleronになる。このCeleronはベースクロックは66Mhzであるが、2ndキャッシュがCPUに内蔵されたインテルの初のCPUになった。ご存知とは思うが、PentiumIIの2ndキャッシュは外部アクセス方式であり、アクセス速度が半減するという弱点があったのだが、このCeleron300Aはそこをいち早く対応し、2ndキャッシュ周りだけでいえば当時最速であった。ただし、2ndキャッシュ自体の容量はPentiumIIより半減されており128KBであった。

当時の販売価格は初出(98年8月後半)で3万円前後。ちょうど同時期に先に話をしたSL2W7やSL2W8のPentiumIIも発売されている。ちょうど同タイミングでの発売もあり、この3個のCPUはかなり話題になった。

選択肢としては

・あくまでPentiumIIとしての高速化

・内部2ndキャッシュということで高速化した300Aをベース100Mhzで動かす

・お気軽に安価に266Mhzをベース100Mhzで動かす

と選択肢が増えたことになる。300Aの値段の付け方がまた絶妙で、SL2W7と同価格というのもまた難しさを招く。また当時300Aはリテールでありクーラーも付いてきていた。実際はクーラーは変えることなくそのまま450Mhzで使用も出来ており、お手軽さは大きかった。SL2W系の二個はやはり2ndキャッシュの耐性もあるのか安定して動きにくいという事例もあり、お手軽さから言えばやはりCeleronに分があったのである。

ただCeleron300Aは値段がかなり高く、Celeron266Mhzに比べるとやはりコスパは今ひとつであった。ただこれも年末近くになると値段は1万円程度に落ち着き始め、PentiumII 450Mhzがまだ6万以上することを考えると非常にオトクなCPUとして動き始める。なお流石に年末迄いくと266MhzのCeleronの在庫はほぼなくなっていたため、実質300A一択といった感じになり、今後このオーバークロック狂想曲は幕を閉じていくことになる。この翌年からPentiumIIIが出ることによりさらに加速度的に周波数は伸びていく。同時にAMDAthlonの発売も重なり、この98年度のゆったりとした流れからは一気に変動していくわけだ。

まさに98年はベースクロックが66Mhzから100Mhzに変わっていく変換期でもあり過渡期でもあった。そんな中Celeronを出してきたインテルは多分に当時のAMDの情報も入ってきていたのだろう。ろくすっぽ耐性等は無視してただただベースクロックのみ固定でコアは最新という歪な構成で出してきた。そんな過渡期でもあった時代に生まれてきたある意味異端児だったのではないかと思う。

事実この後のCeleronオーバークロック耐性は全くなくなり、性能通りのCPUに成り下がっていく。その後の1Ghz戦争へと変わっていくわけである。

なおこのCeleron300Aはその後ベストセラーCPUともなり、各PCメーカーの安価PCの採用も増えかなりの数が販売された。だがお遊びとしてのCeleronはこの時点で終了したと言ってもよいだろう。