サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

PC-9801シリーズ:当時のビジネス・ゲーム状況におけるモデル変化(後編:94年度)

94年のNECは9801ではなく9821シリーズで大攻勢をかけてくる。もはやユーザーからすれば一気に発売されることで大混乱必死になるわけだが、NECも一気に出すことで売れ筋モデルがどうなるかを図っているかのようにも思える。この94年で95年以降の戦略がほぼほぼ決まったと言ってもいいだろう。

setoalpha.hatenablog.com

さて、94年度の98シリーズにおいては特徴がある。まずMultiシリーズの最後のモデルになるシリーズを前半に、そして二代目A-Mateの流れを組むAnも前半に。

その後7月に一気にA-Mate・X-Mate・Multi(マイナーチェンジ)を発売。この時点で凄まじい数なのだが後半にはMultiをCanBeシリーズとしてマイナーチェンジ、最後にXfと言う感じで怒涛の戦略をしてくる。この同時のタイミングは今後の戦略への方針を示唆していたのだろう。このときの売上的なもので95年以降の流れを決めていたと思われる。結果的にはCanBeシリーズは久々のヒットをし、X-Mateシリーズも失敗したB-Mateから改善されかなり売れたのだろう。A-Mateは逆にこの3代目を最後に発売を終了する。ただこれは一概に売上だけとは考えにくい。そして最後にXfの発売で94年度は終了するのだが、純粋なMS-DOSベースでの9801シリーズの正当後継機種としては先代のA-Mateが最後だったと思う。これに関しては前回にも語ったが今回はモデルごとに少し詳細を加えていくことにする。

94年1~5月(上半期)

Multiシリーズの方向性を確立:Ce2 S1(FDDx2)・S2 ・Cs2 S2・S3:最大37.6MB・86音源・共にHDD・ディスプレイ付(Cs2のみXGA対応)

Ce2 T2(HDD内蔵)

9821Ce2:i486SX(25Mhz):(94-01):HDD170MB

  ¥298,000・¥348,000・¥363,000

9821Cs2:i486SX(33Mhz):(94-02):HDD170・340MB

  ¥428,000~¥468,000

9821Ce2:i486SX(25Mhz):(94-07):HDD170MB
  ¥358,000~¥373,000

最後のMultiシリーズになる。7月にマイナーチェンジ版としてCe2にテレビ機能を内蔵したマイナーチェンジモデルが発売されるが基本スペックは変わらない。この最後のMultiシリーズは今ひとつよくわからない路線だったMultiシリーズを7月のマイナーチェンジによりテレビ機能を追加したことでこういった娯楽路線へと切り替えたと言ってもいいだろう。またこの3代目MultiはHDD周りが大きく改善されノート用から通常のIDEタイプが採用。その分価格もリーズナブルになったという点がある。

よく混在されるがCanBeになる前の9821Multiは大きく違っている点があり、まず音源が86音源であること。あくまでMultiはMS-DOSを使うための9821であるという点。そのこともあるのか最大メモリも約40MB以下と抑えられており、この点を見ても明らかだろう。当時の役割からすればモニター付きのプチA-Mateといったほうが良いと思う。CPU&HDDスペックも最大メモリもA-Mate以下、だが86音源と言う当時最新の音源ボードは搭載&PEGCも最大機能で搭載。同時にモニターも付いてくるという感じではじめて98シリーズを買う人のための安い9821シリーズという感じである。A-Mateがもちろんマストではあるが、値段が高いこともあるのでそういった意味でも値段的にも手が出しやすかったと言ってもいいだろう。なお、Cs2の値段がスペックの割に割高であるが、これはディスプレイがXGA対応だということが大きいだろう。当時のXGA対応モニターはかなり高くこれに関しては仕方がないと言っても良い。ただ実際はCe2の方が売れたと思うし、後期モデルのテレビボード内蔵モデルはあったが初めて9821を触る人にとっては非常に魅力的であっただろう。

☆当時の状況☆

正直昨年からの9821シリーズの大攻勢に買う側は大混乱だろう。なにせ一年でマイナーチェンジがされるわけでしかも当時はHDDの仕様等はまだまだ始まったばかり。ノート用からIDEと言われてもピンと来ないのでまったくもってとんでもない世界になっていってるわけだ。ただまだこのMultiシリーズはHDDの無いFDDモデルも存在しており、同時にディスプレイ付ということで、初めての一台としては非常に良い選択だったと思う。とはいえB-Mateの失敗等もありユーザー側からすればなかなか選びにくいと言った感じだっただろう。

最後の9801純粋互換:An U2・U8W・C9T・M2(86C928・MGAII・86音源・メモリ最大127.6MB)

9821An:Pentium(90Mhz):(94-05):HDD340・510MB
  ¥500,000・¥514,000・¥610,000・¥700,000

最後の9801本流を次ぐモデル。A-Mateの基本機能は2代目に踏襲しており、PEGCや86音源等、純粋な9801シリーズの進化と言ってもよいだろう。Windowsを使うためのメモリも127.6MBまで増加されておりこちらも問題なし。初期モデルはバグ付きPentiumであるがこれは愛嬌。Pentiumモデルにも関わらずFDDのみのモデルもあり5インチドライブ搭載モデルも存在している。このあたりは9801の本筋の流れといってもよく、A-Mateは最終モデルまでこのFDDのみの5インチモデルも存在することになる。

中身はほぼほぼ9801に近い。HDD搭載モデルにはVGAも内蔵しているが足回りは単純に486系のものをそのままPentium系に移植した感じに近く、純粋なPentiumモデルよりも足かせは多い。はっきり言ってしまえば高速処理出来るMS-DOS機としては最強だと言うことでありそれだけである。MS-DOS上で重たいゲームや高速処理をしたいユーザーからすればもってこいで当時Pentium系のバグで問題が起こった際に結構話題になっていたことから以外に売れていたのではないかと思う。高い高いと言っても98シリーズで50万円からというのはむしろ安いぐらいで、この最高スペックに近い98シリーズが50万以下で購入できる事自体が当時としては驚きであったのだ。

☆当時の状況☆

とにかく値段が高いが、それでも前年にでたAfに比べるとバーゲン価格に近い。当時のPentiumマシンの相場を考えても98シリーズの価格から見てもかなり安く、またその後中古ショップでも結構出ていたことを考えるとかなり売れていたのではないかと思う。むしろ高速なMS-DOSとしてゲームもビジネスも大安定していただけに買った人は手放さなかったのではないか?こうなると劣悪コンデンサが非常にもったいなく、現存してるものがかなり少ないのは本当に運が悪かったのではないかと思う。

94年7~12月(下半期)

98シリーズ初のタワー型:Xt(430NX&PCIスロット&PCIグラボMGA-II・x4CD-ROM)

9821Xt:Pentium(90Mhz):(94-07):1GB
  ¥1,000,000

98シリーズの転換期:Xa U1・U8W・C9W・C10W(430NX&PCIスロット・PCIグラボMGA-II・上位モデルにx2&x4CD-ROM)

9821Xa:Pentium(90Mhz):(94-07):HDD270・540MB・1GB
  ¥500,000・¥640,000・¥730,000・¥880,000

Xtは初のタワー型98として最新の構成に切り替えてきた9821になる。Xaはタワー型ではないものの内部構造はXtと同様になり、Pentium搭載モデルとして今までの98専用のチップセットを捨て、インテルの430NXにPCIスロットを搭載。CD-ROMもファイルスロット(SCSI接続)からファイルベイ(IDE接続)へと変更。サウンド機能もPCM音源のみ搭載(通称MateXPCM)XaはHDDレスモデルもあるが、実質はHDDモデル一択。XtとXaのHDDモデルにはMGA-IIを搭載し来たるべきWindows95への対応を見据えた構成となっていることがわかる。

Xtは当時としてはぶっ飛んだ仕様でこの時代に1GBのHDDにx4CD-ROMはまさに最高スペック。前年に発売した9821Afと同じ値段であるが、値段なりの価値は全く違い値段通りの最高スペックと言ってもよいだろう。Xtは98初の拡張スロットの数が拡大、Xaは拡張スロットとHDD容量以外はXtと同様。9801が9821へと進化したといってもいいモデルであるが、実際は進化する過程のモデルでもある。実際のところPCIスロットのリヴィジョンに問題があり、これ以降発売されたMate-Xシリーズと違い刺さらないカードも多くなかなかに面倒なモデルでもあった。ただこの次に発売されるXa三兄弟(Xa7・9・10)を見てもこの初期XtとXaは試作機に近かったのだろう。実際どちらの機種もかなり癖が強く、この2機種を購入したユーザーはWindows95を見越して買ったにもかかわらずかなり苦労したという話である。

なお前モデルのB-MateではPEGC不採用は相当クレームがあったのだろう。不採用であったPEGCは機能は一部オミットされつつも採用されている。だが、今度はPCIスロットのリヴィジョンと言う意味で別の意味で不具合が発生するわけでなかなかにX-MateでのPentium移行及びWindows95移行は相当に難産だったと思われる。ただ、この時期のPCIスロットがまだ出来上がったばかりの頃にあえて採用してくる事自体がある意味チャレンジャーでこういった面でも市場の反応を先に見たかったというのだろう。

☆当時の状況☆

このモデルに関しては今ひとつわからない。が、Xtに関しては結構売れていたようで、当時、改造用としてもかなり紹介されていた。問題はXaの方で初期モデルとしての癖が強くかなり苦労した模様。実際後継機種のXa3兄弟が出てからは中古価格もかなり落ち込んでおり、9801から9821として進化するためのテスト機と言う側面が大きかったのかあまり評判はよろしくなかった。またWindows95と言ってもまだまだ一年以上先ということもあり、そういった意味でもNECはテスト的な意味での販売もあったのだろう。特にXaはAnとほぼ同スペック・同価格帯で方向性のみ違う形で販売されており、それをみても方向性を見極めると言う意味のモデルでもあったことがわかる。

最後の純粋9801互換機:9821Ap3・As3(S3 Vision864 メモリ最大127.6MB・86音源・上位モデルのみx2CD-ROM)

Ap3 U2・C8W・C9W・M2
9821Ap3:i486DX4(100Mhz):(94-07):340・540MB
  ¥448,000・¥462,000・¥560,000・¥600,000

As3 U2・C8W・M2
9821Ap3:i486DX2(66Mhz):(94-07):340MB
  ¥348,000・¥362,000・¥458,000

この最後のA-Mateが9801シリーズとしての最終モデルと言ってもよいだろう。9821の際に提唱したPEGCと86音源に対応し、Ap2・Ap3から更にマイチェンされたボード設計も含めて最後の98と言っても過言ではない。惜しむところはPEGCの一部機能がオミットされているところ。ここさえ問題なければよかったのだが、それでもゲーム等をやるぐらいであれば特に問題はなくこれに関しては実際ほとんど問題はなかった。

Pentium機の採用と言うことも言いたいが、すでに同年にAn前年にAfが発売されておりあえてAfのマイナーチェンジはいらないと判断したのだろう。同時に9801としての互換性を考えるとPentiumよりもあえてi486と言う意味もあったのかもしれない。それでも当時最速のi486DX4を採用し、初代から二代目までの変更のなかったCPUに比べると値段は据え置きで一応のスペックアップはしてきた。もちろんグラフィックチップにVision864を全モデル搭載しWindowsとしての対応もスペックアップ。MS-DOSユーザー向けにはプレーンモデルとして3.5インチFDDx2及び5インチFDDx2も準備されている。

スペック的には最後の9801完全互換機ということでかなり売れたと言いたいが、そうでもなかった。というのも93年度から異常な98シリーズの発売ペースに実際のところショップではかなりだぶついていたのだろう。さらに言えば前モデルの二代目A-Mateがかなり余っており、費用対効果を考えても旧モデルの二代目A-Mateの方が明らかに高く、またショップ側も旧モデルは安くしてでも売りさばきたいが仕入れをミスってしまっていた場合ほぼほぼ赤字価格に近い状態で販売ということになり、なので価格は据え置きでスペックアップはしたものの結局は高くついてしまい売れにくくなったと言える。そういった在庫事情もあってか製品的には純粋な9801シリーズの系譜であるが実際のところはそこまで流通は流れなかったと思われる。

☆当時の状況☆

B-Mateから進化したX-Mateも同時発売されそのなかに旧モデルの二代目A-Mateもあり選択肢が増えすぎたということもあってか、正直三代目A-Mateは在庫数的にも少なかかったようで店舗でもあまり在庫はなかったと思う。まさか市場側もこれが実質最後の9801になるとは予想していなかっただろうし、そういった意味でも不備なモデルであったと言ってもよいだろう。実際数年後の中古ショップでもこの三代目A-Mateは本当に数が少なくなかなかお目にかかれないレアモデルであった。結局三代目で終売になったことと販売数のせいか中古で売らず自分で確保していたユーザーが多かったのかもしれない。二代目A-Mateは結構中古でもかなり流れたことを考えてもそれは明らかだろう。なお、二代目A-Mateは時計問題やコンデンサ問題もあり購入時は問題なかったがその後はなかなかに悲惨な状況に陥るのである。それもあり三代目A-Mateはそういった問題もなくそれらの人たちが当時中古で確保という意味でも買っていたとも言える。そう考えるとまともに動く最後の9801というのはあながち間違いではない。

B-Mateの正当後継機種、MS-DOSWindowsの狭間での混乱期を制した最後のi486モデル:9821Xn・Xp・Xs・Xe(S3 Vision864 メモリ最大95.6MB:上位モデルのみx2CD-ROM)

Xn U8W・C9W
9821Xn:Pentium(90Mhz):(94-07):270・540MB
  ¥570,000~¥660,000

Xp U8W・C8W
9821Xp:i486DX4(100Mhz):(94-07):270・340MB
  ¥448,000・¥488,000

Xs U7W・U7WL・U8W
9821Xs:i486DX2(66Mhz):(94-07):210MB・340MB
  ¥348,000・¥380,000・¥398,000

Xe U7W(GD5430)
9821Xe:i486SX(33Mhz):(94-07):210MB
  ¥238,000

すでにWindows95が近づいてきたこともあり、あえてA-Mateを買わずにPEGCを追加したこのX-Mateを選択したユーザーも多かった。中身はほぼほぼ86音源がPCM音源に変わったA-Mateと言ってもいいだろう。モデル構成も非常に似ているがその割には非常にコスパがよく、A-Mateを買わずともこのX-Mateに86音源を別途購入することで実質三代目A-Mateに近い環境に出来たこともある。またWindows95が発売された以降はQ-VisionSCSI付き音源ボードWAVE Master(WAVE SMIT)を導入することで癖のある86音源とWindows対応を両立するという人もいた(このボード自体もPCM音源の音量問題があったが後継のWAVE SMITで対応は出来ていた)。

B-Mateと違いPEGCの採用はかなり大きく、コスパも良いX-Mateは最後の486CPUということで長きに渡って売れており、中古でもかなりの台数があった。さすがに中古になるとA-Mateと価格差が縮まり86音源の関係上お得感は落ちていたが、それでも後期はQ-VisionのWAVE SMITもあり長い間に渡って使っていたというユーザーも多かっただろう。この安くなった上にPEGCが追加された最後の486系X-Mateは最後まで使っていた人も多かっただろう。

同時にこの新生X-MateシリーズからはHDDが全モデルに搭載となった。そういう意味でもお得感はA-Mateよりも高く、FDDを1ドライブ追加しまだ現役で売られていた86音源を別途購入してこっちを買ったほうが明らかに割安だったということも追加しておこう。またXeのみグラフィックチップの性能が落とされている。

☆当時の状況☆

後々の話にはなってしまうがWindows95が発売されて半年強で安定してくると98シリーズからAT互換機へ移行するユーザーも増えてきており、そういったユーザーが最後に過去の遺産を使うための機種として選ばれていたのがこのX-Mateである。MS-DOSベースであればすでに86音源とSCSIボードを持っていればX-Mate本体だけで、どちらも持っていなくてSCSIも使いたければ中古のX-Mate+WAVE SMIT、SCSIカードだけ持っていればA-Mateと言う感じで選べるわけで、特に過去98を持っていてある程度残っていた環境であればこのX-Mateが最適な選択になることが多かったからだ。特にQ-VisionのWAVE SMITが出てからは人気が再燃し特にXsはMS-DOSとして見た場合、CPU性能の割にはかなり価格が下がったこともあり中古市場では人気があったのである。

Multiシリーズの後継機種として、マルチメディアに趣を向けた9821シリーズ:Cb Model2・2D・2F:Cx ModelS2・S3 ディスプレイ一体型(GD5430・118FM音源・メモリ最大39.6MB):Cf ModelS3 XGA対応ディスプレイ一体型(430LX・GD5430・118FM音源・メモリ最大39.6MB

9821Cb:i486SX(33Mhz):(94-10):210MB
  ¥325,000・¥340,000・¥355,000

9821Cx:i486SX(33Mhz):(94-10):270・540MB
  ¥415,000・455,000

9821Cf:Pentium(60Mhz):(94-10):540MB
  ¥590,000

この時期に出た9821シリーズの中で大ヒットを遂げたのがこのCanBeシリーズになる。以降CanBeシリーズは97年のCEREBの発売まで長きに渡って発売されることになり、98シリーズとして唯一無二のマルチメディア対応のソフトてんこ盛りモデルとして販売されることになる。このてんこ盛りシリーズは後のValueStarモデルへの位置づけとなり、最終的には初のMMX PentiumモデルでもあるV166・V200シリーズという正当後継機種が出るまではこのCanBeシリーズが担うことになる。

このMultiシリーズの正当後継機種として発売されたCanBeであるが、今までの9821シリーズと比べて大きな変更点がある。1つ目はPEGCの一部機能のオミット。これに関してはすでに7月に発売されているX-Mateでも搭載されていたし、三代目A-Mateでも切り替わっていたのでこの流れは当然だっただろう。2つ目は86音源の変更であった。この86音源の変更は結構大きく、外面的には拡張FM音源とは言われていたが実際は86音源特有のPCM音源が変更されており、86PCMを使ったゲームソフトには対応しないという意味でもあった。またFM音源部はほぼ86音源と同等で特に不具合は出ないと言ったものである。問題は86PCMが非互換になったことでごく一部のゲームが動かなくなったこと。例を出して言えば前回話したバトルスキンパニック9821は起動時にエラーが出て起動しない。とはいえPCM音源の命令を消せば起動は出来るので単純にbatファイルの書き換えがわかっていれば音声が出ない状態での起動は可能ではある。あの間抜けな声が聞けないのは非常に惜しいがまあゲームとしては動くと言った感じだ。

さて実際のCanBeであるが、起動音が変更されている。電源ボタンを押すとおなじみのピポッではなくピローンと言う感じの音がなって裏にCanBeのイメージキャラクターでもあるハチの画像が表示されると言うなかなかシュールな起動画面に変わっていたりする。またWindowsがまだ3.1で無理やりテレビ関係に対応させていることもあり、98ランチと言う今で言うスマホのボタンチックな画面を専用で採用し、これが使いにくいWindows3.1とうまくマッチして売れていたと言う話もある。

なお上位のPentiumモデルは430LXを採用しており純粋な98としては486モデルのほうが互換性は高いと思われる。

☆当時の状況☆

実際のところこのCanBeシリーズは非常に売れた。モニター一体型の割には非常にコスパがよく、高スペックモデルはXGA対応ということもあった。唯一の欠点はモニターが完全一体型であったこと。前モデルのMultiはモニターが分離型だったのだが、このCanBeシリーズは最後まで売れ筋モデルは一体型であり先々は非常に使い勝手が悪かった。が、実際は一体型でむしろ接続等が楽ということやソフトてんこ盛りもあって売れに売れた。知識のあるユーザーがX-Mateを選んでいたがライトユーザーはこぞってこのCanBeシリーズを購入したわけだ。

この裏にはちょうどこの時期から他のメーカーもWindows95に備えてパソコンを販売してくるのだが、ほぼほぼ全メーカーがモニター付きモデルを売っていたというのもある。98シリーズのジレンマは下手にユーザーが多いためモニターレスモデルも売れてしまうということ。だがWindows95バブルで新規ユーザーが増えてきている現状を見る限り本体のみの販売でモニターは追加で購入というのは非常に分が悪く、そういった理由もあってMultiシリーズで様子見をしていたモデルをCenBeとして進化させモニター一体型という形で答えを出してきたのだろう。だがこれが別の意味で98シリーズにジレンマを与えてしまう…。

実質86音源未搭載のAnのダウングレード:Xf U1・U8W・C9W(MGA-II・メモリ最大127.6MB)

9821Xf:Pentium(60Mhz):(94-12):270・540MB
  ¥370,000・¥448,000・¥498,000

中身はAnから86音源を取り除きCPUを60Mhzにファイルスロットをファイルベイに差し替えたPentiumマシンと言っても良い。直前にXnが発売されているがこれとは違いフロッピーベースのモデルがあり(ただなぜか1ドライブ仕様)また最大メモリ量に差がある。HDDモデルには当時としては最高のグラフィックチップでもあるMGA-IIが搭載されており、それでいて設計はA-Mateに近いため実際はCPUも含めて半年前に発売されたAnの廉価モデルと言ってもいいだろう。

そう考えるとMS-DOSベースで使うには非常に魅力的なモデルになる。なにせ値段はAnに比べても15万近く下がっており(510MBモデルに至っては20万近く下がっている)これに当時はまだ顕在だった86音源を加えればAnやAfに並ぶ最強のMS-DOSゲームマシンにもなれたからだ。値段的にもXpと同価格で非常にコスパが高い。正直なぜこのタイミングでこのような低価格パソコンを出してきたのかよくわからない。

多分に結果論であるが、当時はまだX-Mateの動向がわかりにくかったというのもあるかもしれない。なにせB-Mateがあのザマでその後継機種ということでユーザーも少し戸惑っていたのかもしれない。またいくらコスパが良いと言ってもこのスペックはパワーユーザー向け。すでにパワーユーザはXnやXp、Anに手を出していた可能性もあり、それもあったかもしれない。またすでに98シリーズでのPentium60Mhzの実速度はi486DX4(100Mhz)と同等と言われており、そういう意味でも費用対価格としては今ひとつだった可能性もある。他にもPentiumは今までのi486系と違ってCPUの互換的に98シリーズでは使いにくいとも言われていてそれもあったのかもしれない。

どちらにしてもこのXfはあまり売れなかったようで当時もあまり見たことはなかった。

☆当時の状況☆

上記にも語ったが、Xfはめったにお目にかかれないレアモデルであった。中古ショップで極稀に見たことはあったがそれでも数は少なかった。スペック的にはA-Mateに近く86音源さえあれば実質A-Mateに近かっただけによくわからないモデルでもある。

 

 

 

以上簡単に当時の印象から。なお当時の9801のゲーム事情であるが、

93年~95年発売

信長の野望 覇王伝(92年12月)・ポピュラス2・大航海時代II・ぷよぷよ・現代団戦略EX・魔導物語ARS・提督の決断II・三國志IV・英雄伝説III 白き魔女・卒業II・バトルスキンパニック9821(9821専用)・ポリスノーツ(9821専用)・無人島物語・銀河英雄伝説IV・信長の野望 天翔記太閤立志伝II・リヴァイバルザナドゥ三國志V・

と言った感じで光栄の全盛期とも言える。これに加えて過去の作品は中古ショップでは捨て値で売られており、非常に魅力的だったことがわかる。中古・新品を含めると98のし上はこの93~94年あたりでピークアウトしたと言ってもいいだろう。これ以降は下がり気味になるが、裏歴史とも言える18禁ゲーム(通称エロゲー)に関してみると同年代で比較した場合

あゆみちゃん物語・野々村病院の人々・闘神都市II・遺作・EVE Burst error・雫・下級生・この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO・ツーショットダイアリー

と結構名作と言われるゲームが多く、またここには上げていないがこの時期はエロゲーはかなりの数が発売されていたこともあって、むしろ93~96年あたりまでは9801系エロゲー全盛期とも言われていた。もちろん中古もかなりの数があり、実際のところ95年あたりからは普通の一般ゲームよりもエロゲーの方が数が多い状態にもなっており、エロゲー的に考えると9801ゲームはむしろWindows95が出てからが本番でそれ以降もガンガン発売されていた。

多分にそういった状況がこの98シリーズが立て続けに出されていたことにもマッチしたのだろう。エロゲーやりたさにこの時期にでた9821は特に出荷数も多かったこともあり96年以降になると中古市場に相当数出てくることになる。MS-DOSベースで楽しみたい方々はある意味この9821の乱立がプラスに働いたわけで、エロゲー全盛期にも近かった95年後半からはむしろ中古の98市場はこの時期に出た9821ではX-Mate系を中心にMulti、A-Mateと、9801系ではDシリーズ、Rシリーズを中心に新品&中古音源ボードも入り交じる凄まじい状況になっていった。

次回は機種の紹介ではなくこの当時の乱立したことによる98シリーズ最後の灯火を語ろうと思う。95年から97年あたりまでは本当に夢のような中古98のゲームの世界が体感できたものです。