サブカル回顧録

ゲームやコンピュータ等、一昔前の語り草

ゲーム機列伝⑨ 100メガショック ネオジオ(MVS&AES)

随分昔の記事の続きになるんだけど、PS2時代に行く前にマニアックゲーム本体、ネオジオを紹介しようと思う。 

setoalpha.hatenablog.com

ネオジオ=家庭用と業務用のシステムの総称

さてネオジオであるが簡単に言えば家でゲーセンのゲームが遊べるゲーム機という感じである。

本来アーケードゲームというのは、ゲーム基板+コントロールボックスの組み合わせになり、厳密に言うと違うのだけどざっくり言うと家庭用ゲーム機でいう本体がコントロールボックスでゲーム基板がカセットと思ってくれればいいと思う。ただ、家庭用と違って配線等がむき出しで自分で端子をつないだり、ゲーム基板によっては端子の形状が違ったりするのでそれ専用で準備したりする手間がある。

そんな中、アーケードと家庭用でシステムその他は全く同仕様にして完全互換基盤として開発をし、販売の際にそれぞれの仕様に切り替えて販売することで全く同一のゲームを提供できるものとしてネオジオを発売した。厳密にはアーケード版をMVS、家庭用バンをAESと呼ぶのだが当時は家庭用版はネオジオと読んでいた。今で言えばPSやPS2基盤に近いものだと思う。

これは非常に画期的でなにせ当時は移植でしかまともにできない上にその移植の度合もさじ加減で大分違ったものになりつつあること。また、MVSもネオジオもカートリッジ提供ということもあって、高価なスーファミ的な感じで購入できるということも大きかった。さらにSNK格闘ゲームは特に移植度が悪く、操作性から難易度まで全く別物であったこともあって、一部の好事家?に好まれて買われていた。

実際のところネオジオであるがやってることはゲームに特化したX68000スーファミみたいな感じ。超高性能で高速なスーファミと思ったほうが早いかもしれない。本体の価格は以外にも安く、定価は58,000円と凄まじい価格ではあったが中古であればネオジオ全盛期の90年代半ば前後で14,800円と思った以上に高くはない。ただスティック型コントローラの方の在庫がかなり少なく、こちらの方の入手難易度の方が高くスティックだけで5,000円近くするため、実質2万強と考えてくれたほうがいいだろう。それでもその価格でアーケードゲームと全く同じクオリティのゲームがプレイできることは非常にメリットが高く、またネオジオ全盛期はだいたい94~98年ぐらいまでなので、当時発売したばかりのサターンやPSに比べると本体価格に関しては実はやすかったのである。

よく言われるが本体ではない、ソフトの値段が本気だ

問題はソフトの価格。なにせ当時のROM容量から考えてもかなりの容量。当然のようにソフトは価格が段違い。KOF'95は当時定価で買ったが29,800円。ある程度割引が効くので3万以下にはなるが、一本のソフトで3万円というのはとてつもなくバブリーな世界。何がバブリーって本体よりソフトの方が高いんだぜ。ただ、中古となると結構値段も落ちていくため、当時名作と言われた餓狼伝説スペシャルKOF'94等は1万以下で購入でき(それでも5~7,000円程度はしたが)比較的安価にアーケードゲームがプレイできるということもあって、新作はおいておいて、そこそこの古いゲームであればぼちぼちの価格でプレイできた。

このネオジオは家庭用であれば3万前後から買えたのだが、同じネオジオでも業務用であるMVSは当時定価が10万以上したこともあって、実はそれを考えると家庭用の価格がいかにバーゲンプライスだということがよく分かると思う。さらにアーケード稼働後のほぼ1~2ヶ月後には全く同クオリティのゲームがプレイできる、というのはメリットもあり、特に格闘ゲームが全盛期であった90年代半ばにはお世話になったゲーマーはかなり多いと思う。当時の格闘ゲーマーはこのネオジオは持っていて当たり前であり、餓狼伝説スペシャルKOF'94&95の三本は誰しもがどれかを購入していた。当時としては翌年春に発売されたサターン版のKOF'95が出るまではまともなKOF'95は存在してなかったし、餓狼伝説スペシャルは2000年を回るまではロクデモナイ移植の家庭用しかなく、KOF'94はPS2版が出るまでは全く移植されなかったこともある。また、KOF'96や’97はサターンに移植はされたものの、汎用拡張カートリッジだったこともあり、KOF'95の時のような衝撃的な移植度もなく(特にCDアクセス速度)その関係もあって、KOFシリーズをやるコアなプレイヤーは特にネオジオを購入していた。

アーケードでのネオジオは非常に優秀だった

ネオジオアーケードゲームのオペレーター側からも非常に好まれていたと聞く。まずシステムが同システムなためいちいち基盤の差し替えが必要ない。またMVSも家庭用ネオジオ同様にカートリッジ型での販売だったこともあり、差し替えるだけでゲームの交換ができること。一番大きかったのは値段である。当時のアーケードゲーム基板の価格は20万以上。それがネオジオは新品で導入しても10万前後。価格が半分ということは、それだけ利益も出やすくなる。特に繁華街のゲーセンであれば格ゲーは発売直後の週末の土日の稼働で一日1500~2000回転する。この稼働がだいたい一ヶ月程度は続く。それと同時に平日の稼働もプラスされるため、一ヶ月での稼働数はゆうに1万稼働を超えてくる。当時ワンプレイ50円で営業していたゲーセンも多かったが、これが50円でも利益が出ていたからくりであろう。(これに関してはカプコンのCPS2も同様でこちらも基本システムを導入しておけばカートリッジ方式で切り替えが可能。当時のゲーセンにカプコンSNK対戦格闘ゲームがかなり置いていたのはこれが理由にもあると思う。どちらも基本基盤がある関係でゲーム基板が安価に購入できた)この値段だと導入して一週間程度で基盤代は回収できるわけで、そういった意味でもネオジオは非常にお得だったのだ。またSNK側も変な抱き合せ等も少なく、注文すればその数は導入できることもあってか、比較的小さいゲーセンもネオジオ系のゲームは多数導入されていた。SNK格闘ゲームを導入しつつ、そこで出た利益から他のゲーム基板を購入していくという感じで営業をしていたところも多いと思う。世間では失敗と言われているリアルバウトシリーズやサムライスピリッツ斬紅郎無双剣等も結果的にはもちろん失敗であるが、インカムの面から見ると赤字ではなく、確実に基盤代金の回収はできたと思う。それぐらい基盤価格が安かったのだ。また、KOFシリーズは特に一年近く稼働するため、インカムは徐々には落ちていくが、それでも一年ともなるとその利益は相当だったであろう。10万前後の基盤で10倍以上の利益をもたらしてくれるのは確実だっただろうし、そんな中家庭用をその半値以下でリリースしてくれることは慈善事業にも近く、アーケードゲーム基板の値段を考えればいかにバーゲンプライスだったのかがよく分かる。同時にネオジオは当時としては珍しくリース形式でも販売しており、街の小さな駄菓子屋や本屋にも置かれていた。そのリース代金も相当に安かったのだろう。

システムの加齢による不備

そんなネオジオも最終的には衰退するのだが、それは仕方がないことだろう。PS2が出る時代になって未だにX68000スーファミぐらいの時代に出たゲーム機がそもそも現役で動くこと自体が異常事態。盟友とも言うべきカプコンはCPS3を経由して最終的にはセガのNAOMI基盤へ移行。その他メーカーも3D系を軸にしたゲーム基板へと移行。そんななかネオジオはハイパーネオジオ64を発売するも、中身は極2D偏向、でもってソフトは中途半端な3Dと路線変更大失敗。結果的にネオジオを延命させるももはやプロテクトは完全に解析され、ネットではやられたい放題&会社の運営失敗による突然の倒産。お台場のネオジオワールドの失敗が倒産原因なのは明らかなんだけど、あれは計画を考えると一番儲かっていた時期に計画立ててるっぽいんだよね。よりによって出来上がった時期が衰退期だったことがそもそもの大失敗だったと思う。とはいえあの格闘ゲームブームが完全にバブルだったことを会社側がわかっていればあそこまで無茶な計画は立てなかっただろうし、PSやSSでの家庭用ゲーム機のバブル状態を切り捨ててアーケードとその移植一本で行ったのがそもそもの大失敗だろう…。会社の規模的に仕方なかったんだろうけど、すでに斜陽であったアーケード業界に開発を集中しすぎたことがすべてだったんだろうね。

繁盛期から衰退期へ

以上が当時ネオジオバブルが一番すごかった時代です。かなりはしょって書いてるけど、だいたい当時はこんな感じでした。KOFが出てからのネオジオは特にすごい盛り上がって、このあたりから家庭用ネオジオを買った人が多かったと思います。そしてKOF最後の名作と言われた98年を最後にネオジオは少しずつ衰退していきます。ざっと見てみると個人的にはネオジオ一番のピークは95年でしょうね。KOF'95が発売されて凄まじい盛り上がりでした。あの時代のゲーセンは繁華街であればワンプレイ50円でも一ヶ月で200~250万ぐらいはインカムがあったんじゃないかな。ワンプレイ100円だと稼働数が減るにしてもそれでも200万円はゆうに超えていたと思う。それぐらい凄まじい時代でした。ここから6年でSNKが倒産するなんて誰も思っていなかったでしょう。それぐらい勢いがあったネオジオでした。

あと、ネオジオCDというのもありましたが、これに関しては語りません。あれはアーケードそのものではあるが、アーケードとは全く別物です。等速CDROMによるアクセススピードの遅さはすでに語り尽くされていますので。一つだけ余談として。ネオジオCDで専売され、その後PSやサターンでも発売された読み込み速度極悪仕様のサムライスピリッツRPGですが、あれはネオジオCD版開発中のデバッグ作業はネオジオ本体によるROMカートリッジでのプレイだったそうです。ROMカートリッジでのプレイはそれはそれで超快適だったらしく、とても楽しめてプレイできたとのことです。さらに言えば「どうせならネオジオROM版でも発売しろよ」って言われてたとのこと。ただこれに関しては確実にアーケード版が出せない状態だったので、多分にROM版だすと100%赤字になるからでしょうね…w。だからPSとサターンに別仕様として同ストーリーで移植をしたんでしょう。このときにオリジナルゲームをPSやサターンで発売しておけばまだ今とは変わった道を歩んでいたんでしょうが、なぜかネオジオポケットという謎路線に走ってしまって暴走することもSNKだよな~と思うのは私だけではないでしょう。

最後に補足として

裏歴史?として話すと、97年ぐらいからネオジオエミュレータでもあるNeoRageがリリースされています。その前から動作はできるもののイマイチな出来だったんだけど、98年半ばぐらいでほぼ完全にプレイアブルな状態になっており、このあたりでネオジオのプロテクトはほぼ解析されたと思っていいでしょう。ちょうどWindows98も出た直後だったこともあります。まだ時代はナローバンドだったこともあり、特に容量の大きいネオジオ系はなかなか難しかったでしょうが、それでも一部の間では出回っていたと言う話です。このNeoRage(後期はNeoRageX)は家庭用版が発売後にひっそりと最新ROMが海外サイトで流出していたました。こういった面でもネオジオはこのあたりが限界だったのは明らかでした。